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「夢かたり」後藤明生
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「夢かたり」 後藤明生 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」松崎元子・選 娘が選ぶ父の短篇ベスト5 後藤明生 紹介作品 夏目漱石の「夢十夜」について語るエッセイ風の叙述から、「漱石は『夢十夜』を四十一歳で書いた。わたしはいま四十二歳である。それがまことに残念でならない」という記述を経て、気がつくと読者は著者が少年時代を過ごした北朝鮮の永興という町の情景へと誘われる。遊び友だち、学校の様子、駄菓子屋のおばあさん、朝鮮そば屋のつゆが煮える匂い……後藤明生独特の「思考テレポーテーション」が存分に味わえる名篇。(28頁・★3.5個)
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「道」後藤明生
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「道」 後藤明生 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」松崎元子・選 娘が選ぶ父の短篇ベスト5 後藤明生 紹介作品 著者がこよなく愛した軽井沢町追分の別荘で過ごす夏。仕事に集中するため、作家は家族に先がけてひとり別荘にやってきた。するとなぜか、家にいたる道には切り倒された大きな欅の木が横たわっている。ほとんど毎日訪ねてくる近所に住む花豆老人に、欅の木が切り倒されたわけを聞こうとするが……「歯茎を食べるような口の動かし方」をする地元の老人とのちぐはぐなやりとりを、軽井沢の風景のなかに軽妙な筆致で描く。(32頁・★4個)
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「宝船」後藤明生
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「宝船」 後藤明生 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」松崎元子・選 娘が選ぶ父の短篇ベスト5 後藤明生 紹介作品 枕の下に敷いて寝ると良い初夢が見られるという〝宝船〟の話から、五年前に移り住んだマンションのゴミの分別について、貰ってきた飼い猫は執筆の合間合間に作家の関心を引きつける。そうして迎えた大晦日。宝船の封筒を開けた作家はワインを飲みながらテレビで映画を見続ける。そして明け方の五時近く、ふとんに入ってみたが……脱線に次ぐ脱線、どこに連れていかれるのやら、語りの快楽に酔いながら、読者は思わぬ着地点へ!(36頁・★4.5個)
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「疑問符で終る話」後藤明生
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「疑問符で終る話」後藤明生 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」松崎元子・選 娘が選ぶ父の短篇ベスト5 後藤明生 紹介作品 「とにかく被害者にだけはならないことだ。(中略)そのためにはあのテレビ屋を、絶対に玄関で食い止めるべきだ」。時代は高度成長期。各家庭が白黒テレビからカラーテレビへと切り替えつつある頃。鉄筋コンクリート五階建ての団地の二階に住む小説家が、テレビの修理屋を相手に演ずるひとり相撲の様子を独特のユーモアを交えた語り口で伝える。特にテンポのいい夫婦のやりとりが、上質な漫才を聴いているようで楽しい。(48頁・★6個)
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「飛行機から堕ちるまで」吉行エイスケ
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「飛行機から堕ちるまで」 吉行エイスケ 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 書肆 海と夕焼 柳沼雄太・選 紹介作品 ここは門司市、東川端の卑猥な街。ホテルの踊場で、踊り狂う人々。列車は疾走し、ボートは夜の河岸を離れ、人々の欲望は興奮と色欲の坩堝に溺れる。F飛行士が乗る飛行機は、午前八時に岡山練兵場を出発した……。〈僕〉が目を覚ますと、広間では相変わらずチイク・ダンスに狂熱する人々の群れ。ダダイスムに傾倒した吉行エイスケが紡いだ光景は、果たして詩か物語か。目眩く言葉の洪水に、我々の秩序は揺がされる。(12頁・★1.5個)
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「少女病」田山花袋
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「少女病」 田山花袋 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 書肆 海と夕焼 柳沼雄太・選 紹介作品 杉田古城、三十七歳。かつては少女小説を書きその名を揚げたが、今はしがない編集者である。彼の趣味は少女観察。通勤電車で出会う少女たちの肉体を観察し、髪の匂いを感じ、家庭での姿さえ妄想することが彼の愉楽である。彼女らを抱けば、自らの濁った血が新しくなるとも思う。ある帰りの電車で、杉田はもう一度逢いたいと思っていた令嬢に邂逅する。彼女の美しい姿に見とれる刹那、彼は摑まっていた真鍮の棒を離してしまう——。(32頁・★4個)
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「若芽」島田清次郎
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「若芽」 島田清次郎 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 書肆 海と夕焼 柳沼雄太・選 紹介作品 ある文士が逝った。彼の第一作は、文学雑誌に掲載されるや称賛を浴び、文壇の話題となった。しかし、東京へ住まう文士の音沙汰が絶えると、父親は彼の元を尋ねる。華々しい称賛の影で彼は蹉跌をきたし、病に臥すほどとなってしまっていた。病臥しながらも彼は原稿を書き続け、自らの死を迎えることが先か、原稿の完成が先かの瀬戸際を彷徨う。彷徨の末に完成した原稿を父親に託すも、老いは確実に父親にも刻まれていた——。(20頁・★2.5個)
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都市残酷
¥3,080
ワリス・ノカン(著) 下村 作次郎(訳) 四六判 304ページ 上製 価格 2,800円+税 ISBN978-4-8038-0393-8 CコードC0197 2022年3月17日発売 紹介 山で生きてきた。国家など不要だった。都市の残酷に呑みこまれても、猟人の魂は生き延びる。記憶はいつも創造と壊滅の間でつなわたり。だから物語は書かれなくてはならない。 ワリス・ノカンの文章が、全球化社会に対する抵抗の線を引く。―― 管啓次郎 台湾原住民文学の旗手が描く、都市化された台湾の悲しみ。原住民の誇らしい魂が、都市化の波に呑まれ悲鳴を上げる台湾の現実。真の台湾を知るには避けて通ることのできない作品集。 目次 序 日本の読者の皆さんに ワリス・ノカン 作品舞台地図/凡例 第一部──記憶柔和 弔い 最初の狩猟 長い年月のあとのある夕暮れ タロコ風雲録 悲しい一日 独裁者の涙 野ゆりの秘密 女王の蔑視 失われたジグソーパズル 死神がいつも影のごとく寄りそう 第二部──都市残酷 奥の手 中秋の前 夜の行動 タクシー 小さなバス停の冬 この、もの悲しい雨 希洛の一日 銅像が引きおこした災い 私の小説「先生の休日」 ムハイス コウモリと厚唇の愉快な時間 第三部──山野漂泊 虹を見たか タイワンマス 人と離れてひとり暮らす叛逆者、ビハオ・グラス 父 初出一覧 訳者あとがき 下村作次郎 著者プロフィール ワリス・ノカン(瓦歴斯・諾幹、Walis Nokan) 1961年、台湾台中県和平郷ミフ部落(現、自由村雙崎社区)生まれ。タイヤル族で、パイ・ペイノフ群に属する。最初、柳翱のペンネームで散文集『永遠の部落』を出す。1990年代になって、雑誌『猟人文化』の発行や「台湾原住民人文研究センター」の活動に従事する。 著作は詩集、散文集、小説集、評論集などさまざまなジャンルにおよび、 文学賞の受賞も多数ある。 下村作次郎(しもむら さくじろう) 1949年、和歌山県新宮市生まれ。天理大学名誉教授。2020年2月から7月まで、国立清華大学台湾文学研究所客員教授。著書に『文学で読む台湾』、『台湾文学の発掘と探究』、監訳『悲情の山地』(以上、田畑書店)。翻訳・編集『台湾原住民文学選』全九巻(2012年、第一等原住民族専業奨受賞)、孫大川著『台湾エスニックマイノリティ文学論』、シャマン・ラポガン著『空の目』、『大海に生きる夢』(2018年、第5回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞)(以上、草風館)、陳芳明著・共訳『台湾新文学史』上・下、陳耀昌著『フォルモサに咲く花』(以上、東方書店)など。2021年11月、台湾文学貢献奨受賞。
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中国史を彩った女たち 新装版
¥1,870
紹介 中国悠久四千年の歴史に刻まれた女たちの性を明快に紐解く! 隣国への侵略侵攻、国内の権力抗争から一族の血の争いまで、 その局面ごとに異彩を放ってきた女たちの心理にスポットをあてた傑作! 浮気、陰謀、嫉妬、復讐、わが子殺し、毒殺、なんでもありの裏の中国史! 中国史を彩った女たち 新装版 高橋 英司 著 発行:エムケープランニング 発売:田畑書店 四六判 上製 249ページ 縦195mm 横135mm 厚さ19mm 重さ340g 定価 1,870円(税込) ISBN978-4-8038-0394-5 CコードC0022 旧版 ISBN4771110247 目次 第1章 妻いろいろ、夫さまざま 夫婦の呼び方/悍妻/忌妻/嫉妬の「策と術」/独孤皇后の「女心」/男と女/夫婦をつなぐ「赤い縄」/「婦言」「婦功」の妻/「曲従」の妻/道楽息子の妻/妻の地位/夫婦さまざま/「赤い縄」・孟光/荊妻/賢夫人/妻に酔いつぶされて/内縁の夫婦と未亡人の「はじまり」/命を絶った未亡人/わが耳をそぎ落とす/孝行息子の妻/未亡人となって 第2章 「人形の家」の女たち 鏡/鏡は夫婦の象徴/逐夫/大器は晚くして成る/破鏡再び照らさず/先見の明は妻にあり 第3章 男の業と女の性と 兵器の変遷/男と女で紡いだ業と性の歴史/夏姫/三人の愛人/楚王の〝義戦〟/夏姫の不運/奔命に罷る/怨恨の果て 第4章 性(女)と業(男)で紡がれた大帝国 美人の基準/運命の「赤い縄」/皇帝玄宗/楊貴妃との出会い/「枯楊」と「ぼたん」/付記 第5章 赤い復讐 太陽を射る/天子追放/寡婦・玄妻/嫦娥、月に入る/后羿、天子の座に/復響劇 第6章 〝協奏曲〟を奏でた女たち 夏王朝と殷王朝/酒飲〝協奏曲〟第一番/亡国の歌/湯候起つ/〝協奏曲〟第二番 第7章 大奥・「女の戦い」のあと 後宮/序幕・「命の女商人」/第二幕・はるかな帝座/第三幕・王娡母子の隆運/第四幕・二人の皇后/幕間劇・シルクロードを開く/第五幕・禍福の縄/終幕・女と男の因果関係 第8章 妻がつくった虚栄の「権門」 塩/忠臣の妻/昭帝の崩御と宣帝の登場/「糟糠の妻」、皇后に/皇后毒殺計画/皇后毒殺/騎者/落日/付記 第9章 革命の旗を支えた女たち 「黄巾の乱」を支えた女たち/太陽沈む/妻が引き継ぐ革命の旗/寡婦の旗/女の力 第10章 二人のアイアン・レディー 自ら耕す敗残のエンペラー/戦陣に立つ皇后/「草原の民」と「城の民」/美女と美青年の出会い/夫に代わり遺業を継ぐ/眩む「母の目」/承天皇后の登場/遼国百年の礎石を定める 第11章 女帝が築いた王朝の礎 女性の才能/「才人」武照/愛人から尼僧、そして後宮へ/帝座への道/女帝の治績/女の性 「あとがき」にかえて ページ数 249 判型 四六判上製 著者プロフィール 高橋 英司(著) 1929年秋田県生まれ。 時事通信社入社、仙台支社編集部長、同支社長、本社企画管理部長、業務局次長を経て、同社地域情報センター所長、東日本リサーチセンター特別顧問を歴任。2017年没。 著書に『中国史に学ぶ人間学』『英雄、女人に学ぶ人間学』など。 この書籍をシェア
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「秋」芥川 龍之介
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「秋」芥川 龍之介 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 1920年、「中央公論」に掲載され、翌21年、新潮社より刊行の『夜来の花』に収録されたものです。初期から続く、歴史や古典に材をとった芸術至上的かつ耽美的な作品から、現実や日常を対象化した作品に移行していくさきがけとなった短篇です。幼なじみの従兄をめぐる姉と妹の三角関係を微妙な心理描写と雅びな文体で描いた本篇は、いかにも大正期らしい均衡がとれた作品で、芥川作品のなかでも人気が高く、広く長く読み継がれています。(28頁・★3.5個)
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「雪後」梶井基次郎
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「雪後」梶井基次郎 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 大学に残るべきか、それとも就職するべきか。迷っている行一に自らの研究所に席を設け、迎え入れてくれたのは恩師でした。同時に親や親族の反対を押し切って始まった東京郊外での新婚生活。妻の信子の天性の明るさは、つましく単調な生活を飾ります。やがて身籠った信子のために、東京の中心に家を探し始める行一。時代と世相に横たわる漠とした不安と、薄氷を踏むようなささやかな幸せ。梶井文学に珍しい、希望を感じさせる客観小説。(20頁・★2.5個)
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「雪の夜」織田作之助
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「雪の夜」織田作之助 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 大晦日の夜、別府。番傘を立てて通りの客を待つ易者が、料亭から女たちを侍らせて出てきた、羽振りのよさそうな男とばったり出くわします。それは因縁の男。易者は大阪で印刷業を営む堅実な男でしたが、カフェで会った女に溺れて身を持ち崩してしまいます。熱海から東京、東京から別府へ。病を患った女とともに落ちぶれて流れてきた男の運命は? はかない者たちの愚かな、しかし切実な人生を鮮やかに切り取る名篇です。初出は「文藝」(改造社、一九四一年)。(28頁・★3.5個)
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「枇杷の少女」加能作次郎
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「枇杷の少女」加能作次郎 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 私と同年で幼なじみの絹子の家には大きな枇杷の木があり、幼い二人はよく遊んでいました。美しく成長する絹子に恋心を抱く私。絹子が私にそっとくれた黄色に熟したたくさんの枇杷の実に、私は絹子の思いを知るでした。しかし、私は故郷を離れなくてはいけなかった。各所を放浪する私は枇杷の実を見る度に絹子を思い出すのでした。その後、絹子は結婚して出産し、夫と死別したことを知ります。三十年前のこと、今も絹子の家には枇杷の木があるのでしょうか。(24頁・★3個)
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「入梅」久坂葉子
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「入梅」久坂葉子 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 島尾敏雄の紹介で同人誌「VIKING」に参加し、久坂葉子のペンネームを用いて初めて発表した短篇。一児を抱えた戦争未亡人が若いころ習いおぼえた「絵ざらさ」で生計を立てていこうとしますが、目下の心配事はその家に下男として仕えてきた老人と、親子ほど年の離れた使用人の若い娘との情事でした……夫を早くに亡くした女の寂しさ、若い女の奔放さと移り気に振り回される年老いた男の愚かさなど、十八歳とは思えぬ人生への洞察を秘めた一篇。(24頁・★3個)
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「初恋」国木田独歩
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「初恋」国木田独歩 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。」という口上から始まる掌篇。餓鬼大将だった「僕」が村で評判の頑固な漢学者をへこませてやろうと歯向かい、逆に気に入られて下男と十二歳になる孫娘と三人で暮らす家に入り浸るようになる、というシンプルな物語ながら、最後まで一気に読ませる語り口のみごとさ、また読後にそこはかとない人恋しさを残す点において、無上の一篇です。(8頁・★1個)
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「幸福への道」素木しづ
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「幸福への道」素木しづ 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) まばゆい光に溢れた秋の一日。足が不自由で松葉杖をついた「彼女」は、恋人とともに電車に乗って「静かな、空の広い野」をめざします。しかし野の幸福を求める心はまた、夜のかなしみを抱いてもいました。彼女の弱い肉体に征服された心は、すべてが寂寥に、すべてが悲哀に終りはしないか、という不安に慄きがちでした。果たして「無上の光に輝いてる花の広い野」はあるか? 恋がはらむ喜びと不安を象徴性に満ちた文章で鮮やかに描いた名篇。(20頁・★2.5個)
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「星の女」鈴木三重吉
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「星の女」鈴木三重吉 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 天上から美しい下界を眺めつつ、いつかあそこへ下りてみたいと憧れていた〈星の女〉の三姉妹は、蜘蛛の王様に頼み込み、ある日、蜘蛛の糸をつたって地上へと下り立ちました。ところがいちばん下の美しい妹は、着物をなくしたことから天上に帰れなくなってしまいました。その着物をとってしまった若い猟人と〈星の女〉は結婚したのですが……英語圏で紹介されたインドの説話に材をとりながら、詩的できらびやかなj独自の幻想の中に運命の悲哀を描いた童話の名作。(32頁・★4個)
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「ノーカナのこと」高見順
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「ノーカナのこと」高見順 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「裏切られても、私はノーカナを信じ、愛していた。私は印度人に絶望したくないのであった。私は人間を信じたいのであった」。従軍作家として日本軍占領後のラングーンで文化工作に従事する「私」は、日本人宿舎の使用人世話係として現地人と折衝にあたります。ごまかしや不正、同僚日本人への不信の中で傷つく私は、忠実に働くボーイ、ノーカナに信頼を寄せるようになります。しかしノーカナは私に隠れて物資の横流しをしていた……。(28頁・★3.5個)
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「雪の夜の話」太宰治
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「雪の夜の話」太宰治 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「少しお変人の小説家」を兄にもつ女学生・しゅん子は、身籠った嫂と三人暮らし。東京に雪がたくさん降ったある日、学校帰りに寄った中野の叔母さんからスルメを二枚もらったものの、雪の中に落としてしまいます。そのスルメは二人分お腹が減るようになった嫂に持って帰ろうと思ったもの。その時しゅん子は、いつか兄に聞いた「人間の眼玉は、風景をたくわえる事が出来る」という話を思い出します……イノセンスと諧謔が交錯する太宰文学の真骨頂。(12頁・★1.5個)
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「団栗」寺田寅彦
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「団栗」寺田寅彦 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 年若くして結婚した妻、夏子が肺結核で喀血し、亡くなって三年後に「ホトトギス」に初めて「寅彦」の署名で発表された文章。「私はこれは随筆というより小説だと思っている」と安岡章太郎氏は記していますが(岩波書店『寺田寅彦全集』第一巻解説)、「もう何年前になるか思い出せぬが日は覚えている」という書き出しで始まるこの文章は、自らの痛切な体験を語って詩情と運命への深い思いが同居する、無類に美しいものとなっています。(12頁・★1.5個)
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「鶏」中島敦
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「鶏」中島敦 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) パラオ南島庁の官吏として滞在したコロール島での体験から生まれた「南島譚」のなかの一作。濃い親交を結んだ土方久功(南洋の文化に造詣の深い彫刻家・民俗学者)の日記からモチーフを得ていますが、そこに描かれた原住民の人物造形はかなりデフォルメされており、当の土方には「読まれると恥ずかしいから」との理由で献本しなかったといわれています。それだけに、中島敦が異民族、ひいては人間というものの不可解さをどうフィクションに仕上げているかが伺えて興味が尽きません。(24頁・★3個)
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「自転車日記」夏目漱石
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「自転車日記」夏目漱石 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) ロンドンに留学中だった漱石が、下宿のお婆さんに勧められ、三十五歳にして初めて自転車に挑戦。指南役に従い自転車屋で中古の自転車を入手、さっそく特訓が始まります。……異国にあって神経衰弱を患い、人嫌いになっていくという暗いイメージが先行する漱石の留学体験ですが、その先入観を払拭するような自虐とユーモアに溢れた文章です。多彩な比喩に富み、講談の名手をも思わせる語り口は、後年の「吾輩は猫である」の誕生を予見させます。(20頁・★2.5個)
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「幸福の彼方」林芙美子
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「幸福の彼方」林芙美子 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 戦争で片眼を失って戻ってきた信一と見合い結婚をした絹子。ふたりはともに御前崎に生まれ、名古屋に暮らしていました。千種駅の近くに家を借りて新世帯をもったふたりは、しばし御前崎に戻って信一の実家を訪ねます。御前崎の白い波を見ながら信一はある告白をします。実は自分にはひとり、子どもがいる、と……庶民の飾らない暮らしを写し、その中にある人情や男女の心理の機微を巧みな筆致で描き出して、爽やかな読後感を与える一篇。(28頁・★3.5個)
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「秋日記」原民喜
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「秋日記」原民喜 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 1947年4月「四季」掲載。左翼運動を断念ししばらく退廃的な生活を送っていた民喜でしたが、佐々木基一の姉の永井貞恵と結婚後に充実した創作活動に入ります。本作は1944年にその愛妻を喪った体験を描いた連作の一つで、入院した妻のもとに通う日々が綴られています。語り手の目に映る世界は、作中の表現を借りれば「結晶体」のように繊細でどこまでも澄みきっており、戦争の時代を背景に様々な別れの気配が詩的に凝結されています。(24頁・★3個)