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「桜の森の満開の下」坂口安吾
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「桜の森の満開の下」坂口安吾 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 大昔、桜の森の下は、そこに行けば気が変になるくらい怖しいところだった。鈴鹿峠に住む残酷きわまりない山賊でさえ、桜の森の下の道を通るときは肝が冷えた。ある日、道ゆく夫婦を襲った山賊は、夫を殺して妻を奪った。八人目になるその女房は、怖いほど美しく、そして信じられぬほど残虐だった。山賊をたぶらかして都に出た女房は、山賊に頼んで狩ってきた首で遊ぶ。そんな都の暮らしが堪えられない山賊は、女房を引き連れて桜の森の下へと……幻想と美と残酷が同居する異世界。(44頁・★5.5個)
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「いずこへ」 坂口安吾
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「いずこへ」 坂口安吾 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 工場街にひとり住む「私」のアパートに、女が通ってくるようになった。生活にかかわるものを置かない主義だった私の部屋に、女は鍋釜をはじめいろんな物を持ち込んだ。何も持たないことで、すべてを所有したかった私が一人の女を所有したの間違いだった。私の魂は廃頽し荒廃した。良人と別れて出てきた女は、私とどこか遠くの町で暮らしたがり、実際そうした。新居に押しかけて居座ってしまった女アキ、二人の女の間で自らの生き方に倦む私。デカダンスそのものを描き、堕ちきった先の世界を希求した作品。(44頁・★5.5個)
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「私は海を抱きしめていたい」坂口安吾
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「私は海を抱きしめていたい」坂口安吾 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) “神様の国へ行こうとしながら、いつも地獄の門を潜ってしまう”ような「私」だが、ある女と出会い、はじめて安心を得た。その女は貞操の観念をまったく持たず、しかも不感症だった。また女に劣らず貞操の観念に乏しい私は、もはや恋も出来ず、ただ淫蕩がゆえに透明で清潔な女の肉体をのみ愛した。あるとき女と温泉に行った私は、荒れ模様の海岸を散歩していて一瞬の幻覚にとらわれた。「女の無感動な、ただ柔軟な肉体よりも、もっと無慈悲な、もっと無感動なもっと柔軟な肉体」……それが海だった。(20頁・★2.5個)
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「銅鑼」菅忠雄
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「銅鑼」 菅忠雄 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 荒川洋治・選《初めての世界》紹介作品 ポケットアンソロジースターターキット 荒川洋治・選『初めての世界』収録作品 大正期、東京の上流家庭。二十歳の長男を頭に八人の子供たちを抱えるこの家の生活は、銅鑼に始まり銅鑼に終わっていた。そこに訪れたのは主人が父親がわりに育てた甥、演劇にかぶれ家を出て俳優となった謙吉だった。今度の舞台のために銅鑼を借りたい、との謙吉の申し出を首肯した主人。一家で観劇して我が家の銅鑼の出世を喜んだが、果たして生活のリズムを失った家庭の行く末はいかに……物と心の豊かなつながりを描いた佳品。(12頁・★1.5個)
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「若芽」島田清次郎
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「若芽」 島田清次郎 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 「アンソロジスト 2022年 春 創刊号」 書肆 海と夕焼 柳沼雄太・選 紹介作品 ある文士が逝った。彼の第一作は、文学雑誌に掲載されるや称賛を浴び、文壇の話題となった。しかし、東京へ住まう文士の音沙汰が絶えると、父親は彼の元を尋ねる。華々しい称賛の影で彼は蹉跌をきたし、病に臥すほどとなってしまっていた。病臥しながらも彼は原稿を書き続け、自らの死を迎えることが先か、原稿の完成が先かの瀬戸際を彷徨う。彷徨の末に完成した原稿を父親に託すも、老いは確実に父親にも刻まれていた——。(20頁・★2.5個)
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「幸福への道」素木しづ
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「幸福への道」素木しづ 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) まばゆい光に溢れた秋の一日。足が不自由で松葉杖をついた「彼女」は、恋人とともに電車に乗って「静かな、空の広い野」をめざします。しかし野の幸福を求める心はまた、夜のかなしみを抱いてもいました。彼女の弱い肉体に征服された心は、すべてが寂寥に、すべてが悲哀に終りはしないか、という不安に慄きがちでした。果たして「無上の光に輝いてる花の広い野」はあるか? 恋がはらむ喜びと不安を象徴性に満ちた文章で鮮やかに描いた名篇。(20頁・★2.5個)
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「星の女」鈴木三重吉
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「星の女」鈴木三重吉 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 天上から美しい下界を眺めつつ、いつかあそこへ下りてみたいと憧れていた〈星の女〉の三姉妹は、蜘蛛の王様に頼み込み、ある日、蜘蛛の糸をつたって地上へと下り立ちました。ところがいちばん下の美しい妹は、着物をなくしたことから天上に帰れなくなってしまいました。その着物をとってしまった若い猟人と〈星の女〉は結婚したのですが……英語圏で紹介されたインドの説話に材をとりながら、詩的できらびやかなj独自の幻想の中に運命の悲哀を描いた童話の名作。(32頁・★4個)
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「西班牙犬の家」 佐藤春夫
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「西班牙犬の家」 佐藤春夫 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 愛犬フラテと散歩に出た〈私〉は、ずんずんと進むフラテの後に従って、未知なる雑木林の奥深くに足を踏み入れる。「この地方にこんな広い雑木林があろうとは」次第に好奇心に駆られた〈私〉は、やがて林の奥にぽつんと建った一軒の西洋風の家の前に出た。その家には主人はおらず、ただ一匹の真っ黒な西班牙犬がのっそりと横たわっていた……見慣れた田園の風景の中に、日常からふと遊離した幻想的な世界を描き出す傑作短篇小説。(20頁・★2.5個)
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「風博士」 坂口安吾
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ポケットアンソロジー 作品リフィル 「風博士」 坂口安吾 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 〈諸君は偉大なる風博士を御存知だろうか? ない。嗚呼〉——自殺を偽装した風博士殺人の容疑をかけられた主人公が、警察の取り調べに答える形を借り、風博士の遺書を引用しながら、蛸博士との確執を、大上段に構えたユーモラスな語り口で綴るナンセンス・コント。アテネ・フランセの仲間たちと出した同人誌「青い馬」に掲載。牧野信一から絶賛され、ファルス(笑劇)の精神を唱えて文壇へ登場するきっかけとなった作品。(16頁・★2個)