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台湾原住民文学への扉
¥9,900
A5判 592ページ 上製 定価 9,000円+税 ISBN 978-4-8038-0407-2 【紹介】 1980年代末に民主化運動の波のなかから生まれた台湾原住民文学。漢人、そして日本人からの支配によって歪められてきた原住民の悲しみと秘められた豊かさに真正面から向き合い、90年代はじめから30年追い続けてきたこの分野の第一人者が、これまでの研究成果をまとめた本邦初の台湾原住民文学研究書! 【目次】 台湾および台湾原住民族関係地図 凡例 はじめに Ⅰ ふたつの物語──「サヨンの鐘」と「義人呉鳳」 第一章 「サヨンの鐘」物語の生成と流布過程 第二章 日本から逆輸入された『サヨンの鐘』の物語 ──中央舞台の台湾上演と呉漫沙の『サヨンの鐘』 第三章 物語の終焉──映画と教科書の「サヨンの鐘」 第四章 各種『サヨンの鐘』の検討──劇本・小説二冊・シナリオ・教科書 各種『サヨンの鐘』対照表 第五章 連結する帝国の物語と「届かない」帝国の物語──呉鳳伝説・霧社事件・『サヨンの鐘』の検証 「サヨンの鐘」関係文献について 【参考資料一】「サヨンの鐘」関連地図 【参考資料二】「サヨンの鐘」関連記事 一九三八年―一九四三年 【参考資料三】「サヨンの鐘」関連年表 一九一三年―一九四五年 第六章 「義人呉鳳」の誕生地・諸羅県(嘉義)──呉鳳物語の生成 「呉鳳伝説」関係文献について Ⅱ 台湾原住民文学の世界 第一章 台湾原住民文学序説 第二章 台湾原住民文学とはなにか トパス・タナピマ小伝 第三章 日本における台湾原住民文学研究──翻訳・出版と書評を中心に 第四章 台湾原住民文学をめぐる原住民知識人の言説 第五章 「歴史」のなかに生きるための戦略的台湾原住民文学論──孫大川(パァラバン・ダナパン) 著『台湾エスニックマイノリティの文学論 山と海の文学世界』 アタウ・バラフの風刺詩 第六章 台湾原住民文学に描かれた女性像──原住民女性は「可視化」されてきたか 第七章 日本における台湾原住民文学の受容 Ⅲ 台湾原住民文学点描 第一章 霧社からのまなざし 一、霧社事件七〇周年と台湾九二一大地震 /二、埔里からのまなざし / 三、誇り高きセイダッカとタナトゥヌ /四、台湾からの手紙 / 五、『風中緋桜』のテレビドラマ化に期待する /六、「ガヤ」回復への歩み / 七、山部歌津子『蕃人ライサ』に描かれた「ミカの悪夢」 /八、佐藤春夫と台湾原住民族 第二章 山海の世界 一、簇出する海と山の文学 /二、翻訳で読む台湾原住民文学 / 三、「孫大川の台湾原住民文学論」研究 第三章 山地の文学 一、〝台湾原住民文学〟最前線 /二、アワ文化と狩猟生活 / 三、原住民族の近現代史を、「原住民の視点」から明らかに 第四章 海洋の文学 一、大きく姿をあらわすシャマン・ラポガンの海洋文学 / 二、浮かびあがるシャマン・ラポガンの海の文学 第五章 女性たちのまなざし 一、台湾のアイデンティティを問い直す台湾原住民女性文学 / 二、リムイ・アキの『懐郷』を読む 第六章 事件・戦争 一、原住民作家のパタイが描いた琉球人遭難事件 / 二、王幼華著・石其琳訳『土地と霊魂』 /三、『フォルモサに咲く花』の世界 【参考資料四】台湾原住民族関連憲法 【参考資料五】台湾原住民族一六族人口統計表(二〇二二年) 台湾原住民文学年表 一九四五―二〇二二 初出一覧 あとがき 著者プロフィール 下村 作次郎 (シモムラ サクジロウ) (著/文) 1949年和歌山県新宮市生まれ。関西大学大学院博士課程修了。博士(文学)。現任、天理大学名誉教授。 1980年8月から2年間、中国文化大学交換教授。 2000年9月から半年間、国立成功大学台湾文学研究所客員教授。著書に『文学で読む台湾 支配者・言語・作家たち』(田畑書店、1994年)、『よみがえる台湾文学』(共著、東方書店、1995年)、『台湾文学研究の現在』(共著、緑蔭書房、1999年)、『台湾近現代文学史』(共著、衍文出版、2014年)、『台湾文学の発掘と探究』(田畑書店、2019年)、資料集『日本統治期台湾文学台湾人作家作品』(共編、全五巻・別巻、緑蔭書房、1999年)など。翻訳書に呉錦発編著・監訳『悲情の山地 台湾原住民小説選』(田畑書店、1992年)、『台湾原住民文学選』全9巻(共編訳、草風館、2002年~2009年)、孫大川著『台湾エスニックマイノリティ文学論 山と海の文学世界』(同、2012年)、シャマン・ラポガン著『空の目』(同、2014年)、同『大海に生きる夢 大海浮夢』(同、2017年)、陳芳明著『台湾新文学史』(共訳、上・下、東方書店、2015年)、陳耀昌著『フォルモサに咲く花』(東方書店、2019年)、ワリス・ノカン著『都市残酷』(田畑書店、2022年) 他がある。
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谷崎潤一郎と中国
¥2,200
エキゾティシズムからノスタルジアへ! 〈中国〉を題材とした作品についての綿密な調査と精緻な読みによって、谷崎文学に底流する主調音を見事に説き明かした出色の論考。谷崎研究の第一人者千葉俊二早稲田大学名誉教授推薦! 目次 序章 谷崎潤一郎の中国旅行とエキゾティシズム 第一章 風景のなかの女 ──「 西湖の月をめぐって」── 一 「青磁色の女」と西湖の景観構造 二 〈青磁色の女〉 三 ミッション・スクールの女学生 第二章 谷崎潤一郎が中国へ投射したもの ──「 天鵞絨の夢を視座にして」── 一 ハードン夫婦 二 佐藤春夫「指紋」とボードレール『人工楽園』 三 ゴーチエ「クラリモンド」 第三章 「風流」な文学者 ──「蘇東坡(三幕)─或は「湖上の詩人」」論── 一 『西湖佳話』「六橋才迹」との比較 二 検閲の視点から読む「蘇東坡」 三 佐藤春夫の 「風流」観と「鮫人」を手掛りとして 四 「風流」を乗り越える試み 第四章 西洋芸術と東洋芸術との統合の試み ──「 鮫人に」おける〈浅草オペラ〉── 一 「鮫人」と「真夏の夜の恋」 二 林真珠の造形 ──原信子との関わりを中心に 三 北斗劇団をめぐって 第五章 十年一覚揚州夢 ──「 鶴唳」論── 一 佐藤春夫と小田原 二 「梅崖荘」「鎖瀾閣」と西湖 三 鶴と揚州 第六章 谷崎潤一郎と田漢について ── 戯曲を中心に── 一 「虎を獲る夜」と「昼飯の前」について 二 「湖上的悲劇」をめぐって 第七章 女と蛇 ──谷崎潤一郎「蛇性の婬」田漢「白蛇伝」をめぐって── 一 谷崎潤一郎「蛇性の婬」 二 女と蛇 三 田漢「白蛇伝」 第八章 エキゾティシズムからノスタルジアへ ── 二度目の中国旅行をめぐって── あとがき 初出一覧 【著者】 林茜茜(リン センセン/LIN Qianqian) 1985年、中国浙江省生まれ。四川外国語大学日本語学院、 北京外国語大学日本学研究センター修士課程、 早稲田大学大学院教育学研究科博士課程を経て、早稲田大学で博士(学術)を取得。専攻は日本近代文学、比較文学。 現在、中国上海にある同済大学外国語学院に勤めている。 論文に「江戸川乱歩による中国探偵小説の紹介――ロバート・ ファン・ヒューリック (高羅佩) をめぐって」 ほかがある。
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「西班牙犬の家」 佐藤春夫
¥330
ポケットアンソロジー 作品リフィル 「西班牙犬の家」 佐藤春夫 本体価格:300円 判型:文庫判・スクラム製本(綴じなし) 愛犬フラテと散歩に出た〈私〉は、ずんずんと進むフラテの後に従って、未知なる雑木林の奥深くに足を踏み入れる。「この地方にこんな広い雑木林があろうとは」次第に好奇心に駆られた〈私〉は、やがて林の奥にぽつんと建った一軒の西洋風の家の前に出た。その家には主人はおらず、ただ一匹の真っ黒な西班牙犬がのっそりと横たわっていた……見慣れた田園の風景の中に、日常からふと遊離した幻想的な世界を描き出す傑作短篇小説。(20頁・★2.5個)